宅建試験の学習を進める中で、多くの方が最初にぶつかる大きな壁が重要事項説明ではないでしょうか。覚えるべき項目が膨大で、宅建の重要事項説明の覚え方に悩んでいる方は非常に多いです。
特に35条書面と37条書面の違いの覚え方や、売買や貸借のみで必要な項目の整理といった部分は、試験でも頻繁に狙われるため正確な理解が欠かせません。
さらに、効率を上げるための語呂合わせの活用や、2025年の改正点への対応など、押さえておくべきポイントは多岐にわたります。
この記事では、私が色々と調べて分かった、重要事項説明を効率的にマスターするためのヒントを誠実にお伝えします。この記事を読み終える頃には、バラバラだった知識が一本の線でつながるはずです。

💡記事のポイント
- 35条書面と37条書面の役割の違いと区別する方法
- 取引形態ごとの説明項目の違いを判断する論理的思考
- 記憶を助ける語呂合わせと最新の法改正に伴う注意点
- IT重説や電子書面交付など実務に即した最新制度の要件
宅建の重要事項説明の効率的な覚え方と合格の秘訣

- 35条書面と37条書面の決定的な違い
- 売買や貸借のみで必要な項目の整理術
- 語呂合わせを活用した強力な記憶フック
- 代金や借賃以外の金銭に関する説明義務
- 土砂災害警戒区域など防災区域の絶対性
- インスペクションや建物状況調査の概要
- 石綿の使用有無や耐震診断の記録の解説
重要事項説明、いわゆる「重説」を攻略するためには、ただ闇雲に暗記するのではなく、制度の全体像を把握することが大切です。ここでは私が学んだ、効率的な学習の進め方と得点に結びつけるための基礎知識を整理してご紹介します。膨大な情報を「塊」として捉えることで、脳への定着率が劇的に変わるはずです。
35条書面と37条書面の決定的な違い
まず最初に整理しておきたいのが、35条書面(重要事項説明書)と37条書面(契約書面)の役割の違いです。私が理解したポイントは、「いつ、誰に、何のために」という視点を持つことです。試験勉強をしていると、どうしても似たような用語が並んで混乱しがちですが、この二つの書面は法律上の目的が根本から異なります。
消費者保護と紛争防止の棲み分け
35条書面は、これから高い買い物をする買主や借主が損をしないよう、契約前に宅建士が説明するものです。不動産取引において、プロである業者と一般消費者の間には、どうしても知識や情報の格差があります。その「情報の非対称性」を埋めるために、消費者が「本当にこの契約をして大丈夫か?」と判断するための材料を提供することが最大の目的です。つまり、「事前の意思決定支援」ですね。
35条書面:契約するかどうかを判断するための「事前の判断材料」
37条書面:成立した契約内容を確認するための「事後の証拠書類」
交付相手とタイミングの論理
一方で、37条書面は契約が成立した後に、「言った言わない」のトラブルを防ぐために交付されます。すでに合意した内容を文書化する「証拠書類」の役割を持つため、契約の当事者双方(売主と買主、貸主と借主)に渡す必要があります。この根本的な違いを理解しておけば、「なぜ35条は買主・借主だけに説明すればいいのか」という疑問も解決します。
売主は自分の物件のことを知っているはずなので、改めて説明を受ける必要がないからです。このように制度の「なぜ」を知ることで、丸暗記から脱却できます。詳しい比較については、こちらの37条書面の基本知識と交付義務の解説記事も参考にしてみてください。
売買や貸借のみで必要な項目の整理術
重要事項説明の項目には、「売買・貸借の両方で必要なもの」「売買のみ必要なもの」「貸借のみ必要なもの」があります。これらをすべて丸暗記するのは至難の業ですが、「その取引をする人にとって、その情報が本当に必要か?」を考えると整理しやすくなります。私が実践した方法は、取引形態を「売買・交換」「建物の貸借」「宅地の貸借」の三つに分けてマトリクスで考えるやり方です。
相手方の目的に寄り添った判断
例えば、アパートを借りる人(建物の借主)にとって、その土地の「建蔽率」が何%かはあまり関係ありません。借主がその土地を更地にして何かを建てるわけではないからです。しかし、土地を借りて家を建てる人(宅地の借主)にとっては、建蔽率は死活問題です。自分の思い通りの家が建てられるかどうかを確認しなければならないからです。このように、「その情報の受け取り手が、契約後に何をするのか」という視点を持つと、説明義務の有無が自然と見えてきます。
| 項目例 | 売買・交換 | 宅地の貸借 | 建物の貸借 | 論理的な判断基準 |
|---|---|---|---|---|
| 代金・借賃以外の金銭 | 必要 | 必要 | 必要 | お金のトラブルは共通して重大だから |
| 建蔽率・容積率 | 必要 | 必要 | 不要 | 借主は建物を建築しないため不要 |
| 契約解除の条件 | 必要 | 必要 | 必要 | 契約を終わらせるルールは全員に必須 |
| 私道に関する負担 | 必要 | 必要 | 不要 | 建物賃貸では私道負担が生活に直結しにくい |
(出典:国土交通省「宅地建物取引業法の概要」)
語呂合わせを活用した強力な記憶フック
理屈で理解できても、細かい数字や項目名はやはり覚えにくいものです。そんな時は、昔から受験生の間で使われている語呂合わせを「記憶のフック」として活用するのが賢い方法だと感じました。人間の脳は、無機質な文字列よりも、リズムや滑稽なイメージ(エピソード記憶)を好む性質があるそうです。
認知心理学に基づいた暗記ハック
例えば、重要事項説明そのもの以外でも使える有名な例として、宅建士登録簿の変更に関する「トローチで始終咳する重症免れ」があります。これは「氏名」「住所」「本籍」「勤務先(商号)」「免許番号」を網羅したものです。このようなインパクトのあるフレーズは、本試験の緊張状態でも不思議と思い出せるものです。私自身、最初は語呂合わせに抵抗がありましたが、実際に使ってみるとその威力に驚きました。
語呂合わせを使いこなすコツ
ただし、注意点が一つあります。語呂合わせはあくまで補助ツールであり、「なぜその項目が必要なのか」という背景をセットで覚えることが、本試験での「ひっかけ問題」を回避するコツです。文字列だけを覚えてしまうと、少し聞き方を変えられただけで対応できなくなります。
まずは論理的な理由を理解し、その上で「どうしても覚えにくい部分」にだけ強力な語呂を被せる。この二段構えこそが、私がおすすめする最強の覚え方です。自分が覚えやすいオリジナルの語呂を作ってみるのも、記憶の定着には非常に効果的ですよ。
代金・借賃以外の金銭に関する説明義務
お金に関することは、どんな取引でも最優先事項です。35条では「代金・借賃そのもの」を説明するのではなく、「それ以外に授受される金銭」の額や目的を説明しなければならない、というルールがあります。ここが試験での大きな引っかけポイントになります。「代金そのものは35条の必須説明事項ではない(37条の記載事項)」という点は、口を酸っぱくして言われる基本中の基本です。
トラブルの種を事前に摘み取る
なぜ「それ以外の金銭」が重要なのでしょうか。不動産取引では、物件価格以外にも多額のお金が動きます。売買なら手付金、固定資産税の清算金、登記費用。貸借なら敷金、礼金、権利金、更新料などです。
これらの金銭は、地域によって呼び名が違ったり、将来返還されるかどうかが曖昧だったりすることが多く、トラブルの最大の原因となります。借主や買主が、契約直前になって「え、そんなにお金が必要なの?」と驚くことがないよう、事前に詳細を明らかにしなければなりません。
特に貸借における「敷金」や「権利金」は、退去時にどの程度戻ってくるのか(償却されるのか)という点まで含めて説明が必要です。資金計画を立てる上で欠かせない情報だからこそ、取引の形態を問わず「お金にまつわる付帯的な事項はすべて説明必須」とグループ化して覚えておきましょう。これは実務でも非常に重視されるポイントであり、宅建士としての誠実さが問われる部分でもあります。
土砂災害警戒区域など防災区域の絶対性
近年、特に重要視されているのが「命に関わる情報」です。日本は自然災害が多い国ですから、対象物件が土砂災害警戒区域や津波災害警戒区域、造成宅地防災区域内にあるかどうかは、売買・貸借を問わず、必ず説明しなければならない絶対事項です。これは単なる経済的損失ではなく、居住者の生命・身体の安全に直結するからです。
居住者の安全を守るための共通ルール
「自分は借りるだけだから土砂崩れは関係ない」なんてことはあり得ませんよね。所有して住む場合でも借りて住む場合でも、災害のリスクは等しく存在します。だからこそ、取引の形態に関わらず「全員に伝える」というルールが確立されています。試験対策としては、以下の3つの区域をセットにして、「売・宅貸・建貸すべて〇」とマッピングするのが最も効率的です。
- 土砂災害警戒区域
- 造成宅地防災区域
- 津波災害警戒区域
試験では「建物の貸借の場合は、土砂災害警戒区域内にあることを説明しなくてもよい」といった、いかにもありそうな引っかけ選択肢が出ることがあります。しかし、「命の情報に例外なし」という強い確信を持っていれば、こうした問題に惑わされることはありません。また、実務的にはその区域の「内」か「外」かを伝えるだけで法的な要件は満たされますが、その重要性を重く受け止めておくことが大切です。
インスペクションや建物状況調査の概要
中古住宅の流通を活性化させるという国の方針もあり、「建物状況調査(インスペクション)」に関する説明も頻出項目になっています。ここでの最大の注意点は、「宅建業者に調査を実施する義務はない」ということです。あくまで、過去1年以内に行われた調査があるか、その結果はどうだったか、という既存の情報を開示するのが役割です。
調査の「有無」と「結果」を区別する
重説において業者が行うべきことは、主に3点です。一つは「建物状況調査を実施しているかどうか」。二つ目は「実施しているならその結果の概要」。そして三つ目は「将来的に調査を実施するかどうかの斡旋(あっせん)」です。業者が自ら建築士を雇って調査費用を負担する必要はない、という線引きを明確にしておきましょう。もし過去1年以内に調査が行われていれば、その結果をしっかりと伝える必要があります。
既存住宅流通促進という背景
なぜこの規定ができたのか。それは、中古物件を買う人の「目に見えない欠陥(雨漏りやシロアリなど)があったらどうしよう」という不安を解消するためです。専門家によるチェックが入っているかどうかを事前に知ることで、安心して中古物件を選べるようになります。
この社会的な背景を知っておくと、「インスペクションに関する説明は中古建物の売買や貸借で重要なんだな」と納得感を持って覚えられますね。実務上も、建物状況調査の結果次第で契約価格が変わることもあるため、非常に重みのある項目と言えます。
石綿の使用有無や耐震診断の記録の解説
アスベスト(石綿)の使用調査結果や、耐震診断の記録についても、重要事項説明の対象となります。これらもインスペクションと同様に、「記録がある場合に、その内容を説明する」というスタンスが基本です。専門的な知識が必要な分野だからこそ、業者が新たに調査を強制されることはありませんが、既存の情報はすべてオープンにしなければなりません。
「ない」ことも一つの重要な説明
記録がない場合は、嘘をつかずに「調査記録はありません」と説明すれば義務を果たしたことになります。試験でよく出るのは「記録がない場合は、宅建業者が自ら調査を実施して説明しなければならない」という選択肢ですが、これは間違いです。
しかし、もし売主や貸主から「昔調査した結果があるよ」と渡されているのに、その内容が不利なもの(アスベストが使われていた、耐震基準を満たしていなかった等)だからといって隠すのは絶対に許されません。
不利な内容であっても、記録が存在するならありのままを伝えるのが重説の基本です。特に耐震診断については、「昭和56年5月31日以前に新築の着工がされたもの」という古い建物が対象になることが多いです。
この日付は、いわゆる「旧耐震基準」から「新耐震基準」へ切り替わったタイミングであり、試験でもよく狙われる重要な数字です。命や健康に関わる情報ですから、不誠実な対応は大きな法的責任に繋がるということを肝に銘じておきましょう。
宅建の重要事項説明の覚え方を深める論理的思考

- 法令上の制限を売買のみと貸借で分類する
- 8種制限や手付金等の保全措置のポイント
- 2025年の改正点と最新の法改正への対応
- IT重説や電子書面交付の実施要件
- 契約不適合責任と瑕疵担保の履行措置内容
- まとめ:宅建の重要事項説明の覚え方の総仕上げ
基礎を固めた後は、少し複雑な規定を論理的に整理していく段階です。特に2025年に向けた最新動向や、実務的な視点を加えることで、暗記していた知識が「生きた知識」へと変わり、より強固に定着しやすくなります。ここでは、より踏み込んだ応用知識を整理していきます。
法令上の制限を売買のみと貸借で分類する
都市計画法や建築基準法といった「法令上の制限」は、覚えなければならない具体的な法律名や制限の内容が多岐にわたり、多くの受験生が苦手意識を持つポイントです。しかし、この分野を攻略するための論理的な判断基準は、実は非常にシンプル。
それは、「その取引を通じて、相手方が建物を建てる(または大規模に改修する)立場になるかどうか」という点に尽きます。ここを軸に据えるだけで、暗記に頼らずに正解を導き出せるようになります。
建築主と居住者のニーズの違い
売買契約や宅地(土地)の賃貸借契約の場合、相手方はその土地を手に入れて、あるいは借りて、最終的に「自ら建物を建てること」を想定しています。そのため、建築基準法で定められた建蔽率や容積率、道路斜線制限、北側斜線制限といった「建てる際の物理的なルール」を知らなければ、思い描いた家が建てられないという致命的な損失を被る可能性があります。だからこそ、売買や土地の貸借ではこれらの説明が必須となるのです。
一方で、アパートの一室を借りるような「建物の貸借」の場合、借主の目的はあくまで「すでにある空間を利用すること」です。借主が勝手に建物を壊して建て直したり、勝手に増築したりすることは契約上も物理的にも不可能です。したがって、建物の借主に対して「この土地の容積率は〇%です」と事細かに説明しても、実益がほとんどありません。そのため、建築に関する制限の多くは貸借において説明不要とされています。
「用途制限」だけは貸借でも必須
ただし、ここで一つ大きな例外として覚えておきたいのが「建物の用途制限(用途地域)」です。これは、その建物が「住宅として使えるのか」「店舗として使えるのか」という根本的なルールです。
例えば、静かに暮らすためにアパートを借りたのに、実はその建物が工場としても使える区域にあり、隣で騒音が発生する可能性があるなら、それは借主の生活に直結する大問題ですよね。このように、「居住・利用の継続に影響を及ぼす制限」だけは、貸借であっても必ず説明しなければならないと整理しておきましょう。この「建築か、利用か」という視点を持つだけで、300項目以上ある法令上の制限もスッキリと分類できるようになります。
| 制限の種類 | 売買・交換 | 宅地の貸借 | 建物の貸借 | なぜ貸借で不要/必要か? |
|---|---|---|---|---|
| 容積率・建蔽率 | 必要 | 必要 | 不要 | 建物の借主は建築を行わないため |
| 壁面線の制限 | 必要 | 必要 | 不要 | 建築物の配置に関するルールだから |
| 建物の用途制限 | 必要 | 必要 | 必要 | その建物で何ができるか、生活に直結するため |
8種制限や手付金等の保全措置のポイント
宅建業者が自ら売主となり、宅建業者ではない一般消費者が買主となる「自ら売主制限(8種制限)」が絡む取引は、試験において最も得点源にしやすい一方で、重説項目としても非常に重要です。
この制度の根底にあるのは、「情報も資金力も豊富なプロ(業者)が、知識の乏しいアマチュア(一般消費者)を徹底的に守る」という保護精神です。重説では、この保護が具体的にどのように機能しているかを買主に示さなければなりません。
情報の非対称性をカバーする仕組み
特に「手付金等の保全措置の概要」は、実務的にも試験的にも超重要項目です。不動産取引では、契約から引き渡しまでに時間がかかることが多く、その間に業者が倒産してしまった場合、先に支払った手付金が戻ってこないというリスクがあります。
これを防ぐために、一定額(売価の10%または1,000万円など)を超える手付金を受け取る際には、銀行による保証や保険加入といった保全措置を講じることが義務付けられています。重要事項説明では、この保全措置を「どの機関を使って、どのような方法で講じているか」を明記し、説明しなければなりません。
買主の人生を左右するローン特約の説明
また、住宅ローンの斡旋(あっせん)に関する説明も欠かせません。多くの買主にとって、ローンが組めるかどうかは一生を左右する問題です。もしローンが不成立になった場合、契約が無条件で白紙に戻るのか(ローン特約)、それとも違約金が発生してしまうのか。この条件が曖昧だと、買主は莫大な借金を背負うリスクに晒されます。
8種制限の詳細は、こちらの宅建業法8種制限のわかりやすいまとめ記事でも詳しく解説していますが、これらすべての重説項目は、買主が「安心してハンコを押せる状態」を作るために存在しているのです。プロとしての責任を果たすための項目、という意識で向き合うと記憶の定着が早まりますよ。
ここが引っかけ!:「保全措置を講じない場合」であっても、その旨(保全措置を講じないこと)を説明しなければならないケースがあります。例えば、手付金の額が少額で保全義務がない場合でも、買主は「なぜ保全されないのか」を知る権利があるからです。「義務がない=説明不要」と短絡的に考えないよう注意しましょう。
2025年の改正点と最新の法改正への対応
宅建試験は「生き物」です。法律は社会情勢に合わせて常に変化しており、2025年の試験に向けても多くのアップデートが行われています。特に近年のトレンドは「中古住宅(既存住宅)の流通促進」と「脱炭素社会の実現」です。古いテキストや数年前の過去問だけに頼っていると、最新の重説項目を見落とし、致命的な失点に繋がる可能性があります。合格を確実にするためには、常に情報の鮮度を意識しなければなりません。
法改正箇所は出題者の「宝庫」
試験作成者の立場からすれば、法改正箇所は「受験生が実務に即した最新の知識をアップデートできているか」を判別するための絶好のターゲットです。例えば、建物状況調査(インスペクション)については、単に「実施の有無」を説明するだけでなく、調査結果の概要についてより具体的な開示が求められるようになっています。また、建物の省エネ性能に関する表示制度の変更に伴い、重説でもエネルギー消費性能の向上に資する事項の説明が重視される傾向にあります。
さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、IT重説や電子書面の運用ルールも細かく規定されるようになりました。これらの改正は、単なる暗記項目ではなく「これからの不動産業界のスタンダード」です。最新の法改正情報は、定期的に国土交通省の公式サイトや、信頼できる宅建学習サイトでチェックする習慣をつけましょう。情報の鮮度を保つことこそが、合格への最短距離を走るための必須条件と言えます。 (参照:国土交通省「宅地建物取引業法の改正について」)
IT重説や電子書面交付の実施要件
不動産実務において、もはや当たり前になりつつあるのが「ITを活用した重要事項説明(IT重説)」です。かつては賃貸借取引に限定されていましたが、現在では売買取引でも全面的に認められています。これにより、わざわざ店舗に足を運ばなくても、自宅や外出先からスマホやPCで重説を受けられるようになりました。しかし、非対面だからこそ、消費者保護のために厳格な実施要件が定められています。
対面と同等の品質を確保するために
IT重説を適法に行うための大原則は、「対面での説明と同じ環境を作ること」です。具体的には以下の3つの柱を完璧に守る必要があります。
- 双方向性の確保:音声と映像がリアルタイムでやり取りでき、宅建士と相手方がお互いの顔や図面を鮮明に確認できること。録画放送などはNGです。
- 書面の事前送付:説明を受ける人が、説明の最中に実際に書面(35条書面)を手元で確認できるよう、あらかじめ郵送などで届けておく必要があります。
- 宅建士証の提示:説明開始前に、カメラに向かって宅建士証をはっきりと提示しなければなりません。これは対面時と同じく「資格を持ったプロが話している」ことを証明する絶対的な義務です。
電子書面交付には「承諾」が必須
また、最近では35条書面そのものを紙ではなくPDFなどの電子データで交付することも可能になりました。これを「電子書面交付」と呼びますが、ここでの最大の注意点は「相手方の承諾」が絶対条件であることです。業者が勝手に「うちはペーパーレスなのでメールで送りますね」と押し付けることはできません。
試験では「承諾がなくても、一定のセキュリティ基準を満たせば電子交付できる」といったひっかけが出ますが、これは×です。デジタルの便利さと、それを支える厳格なルールの両面を正しく理解しておきましょう。
契約不適合責任と瑕疵担保の履行措置内容
物件を引き渡した後に、屋根の雨漏りやシロアリによる食害など、契約内容と適合しない不具合が見つかった場合に備えるのが「契約不適合責任」に関する規定です。これは民法上の概念ですが、宅建業法35条では、この責任を業者が確実に果たすためにどのような「バックアップ(履行措置)」を用意しているかを説明するよう義務付けています。いわば、買主のための「最後の防波堤」を詳しく教えるステップです。
保証の「中身」を具体的に伝える
業者が「責任を持ちます!」と口で言うのは簡単ですが、もしその業者が倒産してしまったら責任は果たせません。そこで、重要事項説明では以下の具体的な措置の有無を伝えます。
- 瑕疵担保責任保険の加入:保険会社と契約し、不具合があった際に修理費用が支払われる仕組み。
- 保証金等の供託:万が一に備えて、あらかじめ現金を供託所に預けておく仕組み。
もしこれらの措置を講じていないのであれば、そのまま「講じていない」と説明しなければなりません。特に、宅建業者が自ら売主となる場合は、この責任を負う期間を「引き渡しから2年以上」とする特約以外は、買主に不利なものは無効になるという強力な制限があります。
重説において説明すべきは「責任を負うかどうか」という抽象的な話ではなく、「不具合が出たときに、具体的にどこからお金が出て、どう修理されるのかという実効性」です。このように、民法の知識と業法の重説項目をリンクさせる「芋づる式」の整理法が、本試験での得点力を劇的に高めてくれます。
まとめ:宅建の重要事項説明の覚え方の総仕上げ

ここまで、宅建の重要事項説明の覚え方について、多角的な視点から深掘りしてきました。項目数の多さに目が行きがちですが、迷ったときはいつでも「誰のために、この説明が必要なのか」という法律の根本的な目的を思い出してください。
35条書面は「契約前の判断を助ける羅針盤」であり、37条書面は「契約後の安心を確実にする証拠」です。この軸がブレなければ、どんなに複雑な選択肢も論理的に絞り込めるようになります。
語呂合わせを使って記憶の「きっかけ」を作り、取引形態ごとの論理的なマトリクスで情報の「整理」を行い、さらに最新の法改正で知識の「鮮度」を保つ。この3つのステップを繰り返すことで、難攻不落に見える重要事項説明も必ず得意分野に変えることができます。
本記事の内容は学習の大きな助けになりますが、数値や細かい要件についてはあくまで目安として捉え、正確な情報は必ず国土交通省の最新ガイドラインや、信頼できる最新のテキストで最終確認を行ってください。
また、実務上の個別のトラブルや詳細な法的判断が必要な場合は、弁護士や専門の宅地建物取引士にご相談されることをおすすめします。合格までの道のりは決して楽ではありませんが、一歩ずつ誠実に積み上げた知識は、あなたの人生を切り拓く最強の武器になります。心から応援しています!
宅地建物取引士試験の重要事項説明(35条書面)および関連制度における重要なポイント15選
- 35条書面の目的消費者が契約締結の意思決定を行うための「事前の判断材料」を提供し、情報の非対称性を解消すること。
- 37条書面の性質成立した契約内容を明文化し、後日の紛争を防止するための「事後の証拠書類」としての役割を持つこと。
- 説明と交付の対象者重要事項説明は、新たに物件を取得・賃借しようとする「買主または借主」に対してのみ実施される。
- 自ら賃貸の適用除外自己所有の物件を直接貸し出す行為は宅建業に該当しないため、35条および37条の規定は適用されない。
- 代金・借賃以外の金銭手付金、敷金、礼金、権利金など、代金や借賃以外に授受される金銭の額と目的は説明必須である。
- 防災関連区域の所在土砂災害警戒区域、造成宅地防災区域、津波災害警戒区域内の所在は、売買・貸借を問わず説明が義務付けられている。
- 法令上の制限の分類建築基準法等の制限(建蔽率・容積率等)は、建物を建築しない「建物の貸借」においては説明不要である。
- 用途制限の重要性建物の用途その他の利用制限は、居住者の生活に直結するため、建物の貸借であっても説明が必要である。
- 建物状況調査(インスペクション)業者が自ら調査する義務はないが、過去1年以内の調査実施の有無と結果の概要を説明しなければならない。
- 石綿(アスベスト)の使用調査過去に調査結果の記録が存在する場合、その記録の内容を隠さず詳細に説明する必要がある。
- 旧耐震建物の耐震診断昭和56年5月31日以前に新築着工された建物で、耐震診断の記録がある場合はその内容を説明する。
- IT重説の実施要件双方向のリアルタイム通信、書面の事前送付、画面越しでの宅建士証の提示という要件を全て満たすこと。
- 電子書面交付の承諾35条書面を電磁的方法で交付する場合、事前に相手方の承諾を得ていることが絶対条件である。
- 手付金等の保全措置宅建業者が自ら売主となる場合、一定額を超える手付金等に対して講ずる保全措置の方法を説明する。
- 契約不適合責任の履行措置引き渡し後の不具合に備え、瑕疵担保責任保険の加入や保証金の供託など、どのような措置を講じているか。
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